「北の大地に誘(いざな)われ… 北海道ひとり旅(第4話)」

9月22日 午前7:00。
虹別オートキャンプ場の快適なコテージで贅沢な夜を明かし、すっきりと目覚めた朝。

「さて、今日はどこへ向かおうか」
車を走らせながらふと頭に浮かんだのは、道東の名物・厚岸(あっけし)の牡蠣(カキ)でした。
朝の静かな空気を切り裂くように車を南下させ、一路、厚岸を目指します。
「朝っぱらからプリプリの生牡蠣を堪能するぞ」と意気込みながら「道の駅 厚岸グルメパーク(コンキリエ)」に到着したのは、午前9時前のことでした。


しかし、看板を見て愕然とします。
……レストランの営業は、11時から。
いくらノープラン旅とはいえ、さすがに早すぎました。
空腹を抱えたまま、少々肌寒い風が吹く駐車場で2時間も待つのはあまりにも切ない。
「そうだ、確か15年ほど前に来たとき、近くの地元のスーパーに立派な厚岸産の牡蠣が売っていたはずだ!」
過去のうっすらとした記憶を頼りに、藁にもすがる思いで近くのスーパーへ車を走らせました。
鮮魚コーナーへ一直線に向かい、期待に胸を膨らませて棚を覗き込みます。
……ない。
どこをどう探しても、お目当ての生牡蠣の姿はありませんでした。
15年前の記憶は見事に裏切られ、残されたのはペコペコのお腹だけです。
「このまま手ぶらで去るわけにはいかない……」
トボトボと店内を歩き回り、惣菜コーナーで私が手に取ったのは、冷たい「かき揚げそば」でした。
牡蠣は買えなかったけれど、せめて「‟カキ”つながり」で……
という、なんとも苦しいダジャレのようなチョイスです。
駐車場に戻り、車内で静かにすする「かき揚げそば」。
出汁のうまみが身に染み渡り、これはこれで実に美味しかったのですが、自分でも思わず苦笑いしてしまいました。

ガイドの仕事中なら絶対にあり得ない、このアバウトさと想定外のオチ。
けれど、こうした思わぬハプニングこそが、一人旅の醍醐味なのかもしれません。
お腹を満たした私は気を取り直し、次の目的地である阿寒湖方面へと車を走らせました。
その道中、ふと目にとまったのが小さな無人駅、「磯分内(いそぶんない)駅」でした。

一日に数本しか列車が来ないというその駅は、どこか懐かしく、可愛らしい佇まいをしていました。
もちろん完全な無人駅。

吸い込まれるように構内へ足を踏み入れると、目の前にはどこまでもまっすぐ伸びる線路が広がっています。
誰もいない静寂の中、1両編成の列車が奏でる音を想像しながら、静かにカメラのシッターを切りました。

緻密に組まれたツアーのスケジュールでは、こうした名もなき小さな駅にふらっと立ち寄ることはできません。
「時間にとらわれず、気の向くままにハンドルを切る」 そんなノープランひとり旅の味わい深さを、この静かな駅で改めてかみしめるのでした。
心地よい寄り道を挟み、私はさらに車を走らせるのでした。
(第5話へ続く…)


























コメント