

稚内を目指した冬の北海道旅 〜「行かない」という選択が教えてくれたこと〜(最終話)
今回の北海道旅行は、結果として「稚内に行けなかった旅」でした。 それは事実ですし、最初に描いていたゴールに辿り着けなかった、という意味では未完の旅だったのかもしれません。 けれど今、振り返って強く思うのは、 この旅は、私自身の仕事——登山ガイドという立場に、深くつながる旅だった ということです。 判断とは、「正解を当てること」ではない 登山でも、旅でも、私たちはつい 「正解」を探してしまいます。 行くべきだったのか 行かなかったのは臆病だったのか もう少し待てば状況は変わったのではないか けれど、実際の現場にあるのは 結果がわかる前の判断 だけです。 天候、交通、時間、体力、経験。 限られた情報の中で、 「今、この時点でどうするか」を決める こと。 今回の旅で繰り返していたのは、まさにその連続でした。 ガイド業で、私が一番大切にしていること 登山ガイドとして、私が一番大切にしているのは、 「行くこと」ではなく、「無事に帰ること」 です。 山頂に立つことは、確かに魅力的です。 けれど、山頂に立たなくても、価値のある登山はいくらでもあります。 むし


稚内を目指した冬の北海道旅 〜辿り着けなかった場所と、辿り着いた実感〜(第4回)
この旅の目的地は、最後まで「稚内」でした。 けれど結果から言えば、私は稚内に辿り着いていません。 天候、列車の運行状況、乗り継ぎの不確実性。 その一つひとつを考え、悩み、調べ、相談し、最終的に 「無理をしない」 という判断を重ねた末の結論です。 行き先を変える、という決断 旅の途中で行き先を変えることは、どこか「負け」のように感じてしまうことがあります。 せっかくここまで来たのに。 もう少し頑張れば行けたかもしれない。 次はいつ来られるかわからない。 そんな気持ちが、何度も頭をよぎりました。 でも同時に、 「この状況で行くことが、本当に正解なのか?」 という問いも、ずっと消えませんでした。 (車窓越しの列車に「稚内」の文字が... 私が乗車する予定だった特急「宗谷」です) 登山と同じだ、と思った瞬間 登山でもよくあることですが 天候が崩れそうなとき 予定より時間がかかっているとき メンバーの体調や足取りに不安を感じたとき その場で撤退や変更を判断することは、決して珍しくありません。 むしろ、 「引き返す判断」ができるかどうかこそ、経験と責任が問わ


稚内を目指した冬の北海道旅 〜北へ向かうほど、心が静かになっていく〜(第3回)
前回までの記事では、「思い立った旅の始まり」と「本州を縦断する鉄道の時間」について書いてきました。 第3回は、いよいよ“北海道に足を踏み入れてから、稚内へ向かう道中”です。 ただ距離を移動しているだけなのに、なぜか心の奥が少しずつ整っていく――そんな感覚が、はっきりと自覚できた区間でした。 北海道に入った瞬間、空気が変わった 新函館北斗駅に降り立った瞬間、「寒い」というよりも、まず感じたのは 空気の密度の違い でした。 同じ日本なのに、音が少なく、風が澄んでいて、時間の流れが一段ゆっくりしている。 これは、山で標高を上げていったときに感じる感覚に少し似ています。 景色が変わる前に、まず 身体の内側が反応する あの感じです。 列車に揺られながら、何もしない時間を許す 函館から札幌、そしてさらに北へ。 車窓に流れていくのは、広い大地と、整いすぎていない町並み。 スマホを見る時間は自然と減り、代わりに「ただ外を見る」時間が増えていきました。 何かを考えようとしているわけでもなく、かといって、何も考えていないわけでもない。 登山中で言えば、 登りでも下り


稚内を目指した冬の北海道旅 〜天気予報に振り回される日々〜(第2回)
旅の計画は、立てている時間が一番楽しい―― よくそんなことを言います。 けれど今回の旅は、計画を立て終えたその瞬間から、少しずつ様子が変わっていきました。 稚内の天気予報が「揃わない」 出発日が近づくにつれ、気になり始めたのが 稚内の天候 でした。 確認していたのは、主に次の3つ。 気象庁 Yahoo!天気 ウェザーニュース ところが... 同じ日・同じ場所の予報なのに、内容がまったく揃わない。 「曇り時々雪」 「風雪強い」 「暴風雪の可能性あり」 さらに... 「信頼度A」と書かれている予報と、「警報級の可能性」と書かれている予報が、同時に存在する状況。 正直 どれを信じればいいのか分からない というのが本音でした。 (稚内市の警報・注意報〈1/10時点の稚内地方気象台発表〉) 登山と同じ「引き返す判断」 私は登山ガイドという仕事柄、天候判断には日常的に向き合っています。 だからこそ、 行けるかどうか 行ってよいかどうか 行かない方がよいか この3つは、まったく別のものだと考えています。 「列車が動くかどうか」「バスが運行するかどうか」


稚内を目指した冬の北海道旅 〜すべては一本の列車から始まった〜(第1回)
今回は、昨年10月に突然思い付き、1月に実行した「北海道旅行」について書きたいと思います。 でもなぜ「北海道旅行」の記事を?と... 登山ツアーやトレッキングを行っている会社のブログに、「北海道旅行」の記事が載ることに、少し違和感を覚える方もいるかもしれません。 けれど私自身、 山も旅も、「安全を考え、判断し、行動する」という点では本質的に同じもの だと考えています。 今回の北海道旅行は、観光そのもの以上に、 「計画」「判断」「引き返す勇気」 について、改めて考えさせられる旅でした。 その過程は、登山ガイドとして日々向き合っている判断と深く重なります。 そのため今回は、あえてこの体験を、ブログに残してみようと思いました。 すべては突然の思いつきから始まった 2025年の10月末。特に理由もなく、ふと、 「宗谷本線に乗ってみたい...」 という気持ちが湧いてきました。 旭川から稚内へ。 日本最北の地へ向かう、あの長い単線。 冬の宗谷本線の車窓を、静かに眺めてみたい。 それが、この旅の一番の目的でした。 そして、もう一つ。 以前フェリーで何度か渡った
























