

春の立山連峰を仰ぐ… 富山「雨晴海岸」巡礼紀行(第二話)
3月19日夕方から20日夕方まで。 日々の忙しいあい間を縫って、唯一、見つけたのがこの24時間です。 行くべきか… 行かざるべきか… 自宅を出る直前まで、自問自答を繰り返したのでした。 しかし、「いや、今のこの瞬間に行かなければ、必ずあとで後悔する... 」 そんな理屈なき直感に、最終的に突き動かされたのでした。 今回、この弾丸富山旅を思いたったきっかけは、ある1枚の写真です。 雨晴海岸から望む剱岳 ここ「雨晴(あまはらし)海岸」から望む穏やかな富山湾と、背後にそびえる3000m級からなる立山連峰がひとつにおさまるこの絶景を、どうしても見てみたったのです。 3月20日 4:30 有磯海SAを出発 結局、寝袋に入っても一睡もできぬまま、出発予定の4:30となりました。 未だ真っ暗な富山の空には、かすかな星のまたたきが残ります。 足早に準備を済ませ、重たい体を引きずるかのごとく、更に北へ向け、車を走らせます。 3月20日 5:30 雨晴海岸に到着 ついに、目的地である雨晴海岸に辿りつきました。 薄暗がりの中、まずは静まり返った雨晴駅の駅舎に立


春の立山連峰を仰ぐ… 富山「雨晴海岸」巡礼紀行(第一話)
雨晴海岸から仰ぐ、剱岳と立山連峰の朝焼け 今からさかのぼること、およそ10年前。 私は若さに任せ、日帰りの剱岳登山に挑みました。 夕方、伊豆の自宅から車を走らせること6時間。 深夜、早月尾根の登山口である馬場島に到着。 3時間の仮眠後、暗闇の中を歩き出し、午前7時には山頂へ。 正午には下山し、その日の夕方には再び伊豆の自宅へ戻る……。 世に言う「弾丸登山」です。 あの頃の私にとって、山は征服すべき対象であり、自らの限界を試すための峻険な壁でした。 若さゆえの無茶であり、傲慢さだったのかもしれません。 昔から、思い立ったらすぐにやらねば気が済まない性分でした。 数日の休みができれば即座にチケットを取り、一人でアジアの国々を彷徨う。 そんな「動」の生き方が、私のすべてでした。 しかし今回、私の中に芽生えたのは、全く別の感情でした。 あの鋭い岩の峰に登るのではなく、「敢えて遠くから、ただ静かに眺めていたい」。 それは、単なる体力の衰えではなく、人生の荒波を経て、大切なものを遠くから慈しみたいという、祈りにも似た心の変化だったのかもしれません。 計画


霊山・身延山を歩く ~ 静寂の森で思索の山行 ~
3/12(木)は身延山へ。 身延山は、山梨県身延町にある、日蓮宗の総本山・久遠寺がある霊山で、開祖である日蓮上人が晩年を過ごした場所です。 山頂には、奥之院思親閣があり、その名の通り、日蓮上人が故郷をしのんで両親を思った場でもあるそうです。 実は、先月2月にもこの山を下見しましたが、下山後に、どうしても気になることがあったため、2度目の下見となりました。 登山ガイドとしての矜持、と言えるのかもしれません。 この日は平日ということもあり、境内にも行きかう人はまばらで、登山道に至っては、終始、誰一人とすれ違うことはありませんでした。 そのためか、また、この山が霊山であるが故か、一人で歩いていると、自然と物思いに耽っていくのを実感した今回の山行でした。 とても急峻な登山道を、一歩一歩、足裏の感覚を確かめるように、まるで、自分が生きているという実感を確かめるかのごとく、歩みを進めていきます。 登山開始前から特に決めていた訳でもありませんが、なぜか、 ・水を欲しても山頂までは我慢する ・山頂までは一切休憩を取らずにひたすら歩く という、ストイックな目標


~静岡の低山で“自遊”時間~「自遊舎の里山・低山トレッキング紀行」《神石山トレッキング(湖西連峰)》編
浜名湖を一望する展望の山「神石山」 3月7日(土)、 静岡県湖西市と愛知県豊橋市の県境に位置する 神石山(かみいしやま・342m) を歩いてきました。 神石山は、湖西市から豊橋市にかけて連なる 「湖西連峰」 の一座で、標高こそそれほど高くありませんが、山頂からの展望は素晴らしく、 浜名湖を一望できる人気の低山 として知られています。 今回の登山は、静岡県の最西端、湖西市にある 梅田親水公園 に車を停め、 梅田峠 → 仏岩 → ラクダ岩 → 神石山山頂 というルートを歩きました。 静岡県の東の端に近い私の自宅から、最西端の湖西市までは高速道路を利用しても片道約2時間半。 改めて、 静岡県が東西にとても広い県であること を実感する移動でもありました。 地元の方に愛されている「湖西連峰」 登山口から山道へ入ると、まず感じたのは 登山道の歩きやすさ でした。 道はしっかり踏み固められており、よく整備されています。 その様子から、この山が 多くの人に日常的に歩かれている山 であることがすぐに伝わってきました。 実際に歩いている途中でも、ご年配の


朝霧高原・富士宮営業所から見える「ダイヤモンド富士」
朝霧高原にある弊社富士宮営業所からは、毎年3月下旬ごろになると「ダイヤモンド 富士」を見ることができます。 ダイヤモンド富士とは、富士山の頂上と太陽が重なる瞬間のことで、山頂がきらりと 輝くように見える、ほんの短い時間の特別な景色です。 事務所からは、東の方向に富士山を見ることができます。 そのため、この時期になると、早朝に富士山の後ろ側から太陽が昇り、ちょうど山頂 の真上に朝日が重なる瞬間が訪れます。 営業所からは、だいたい 3月26日~30日の午前6時30分ごろ に、その光景を見ること ができます。 もちろん、天気が良くなければ見ることはできません。 少しでも雲がかかってしまえば、山頂から太陽が顔を出す瞬間を見ることは難しくなり ます。 それでも、朝の澄んだ空気の中で富士山を眺めながら、その瞬間を待つ時間は、朝 霧高原らしい静かなひとときです。 ここに掲載している写真は、一昨年、事務所の前から撮影したダイヤモンド富士の様 子です。 山頂の真上から朝日が現れた瞬間、思わずカメラを構えたことを覚えています。 もうすぐ、今年もその季節がやってきます


~静岡の低山で“自遊”時間~「自遊舎の里山・低山トレッキング紀行」《高ドッキョウ トレッキング》編
地形図に名前が刻まれた山、「高ドッキョウ」 今回は、静岡市清水区の興津川上流部に位置する山、 「高ドッキョウ」 (1133m)を歩いてきました。 実はこの山、数年前までは地形図に名前がなく、ただ標高の数字だけが記されている「知る人ぞ知る存在」でした。 しかし、改めて最新の地図を確認すると、今はしっかりと「高ドッキョウ」の名が刻まれています。 かつては誰にも名指しされなかった場所に、名前が与えられる。 それは、曖昧だった存在が、一つの確かな輪郭を持った瞬間のように感じられ、今の自分の心に不思議と強く響きました。 登山道途中に現れる、慈しみに満ちた!?「ヒュッテ樽」 登山道を進んでいくと、一軒の無人小屋が現れます。 その名も「ヒュッテ樽」。 驚くのは、その管理の行き届き方です。 個人所有の小屋でありながら、内部もトイレも驚くほど清潔に保たれています。 そこにあるのは、単なる清掃という作業ではなく、 「自分の居場所を、自分自身の手で大切に整える」という、持ち主の方の強い意志と誇り です。 誰に見せるためでもなく、ただ自分の信念のために場を清める


~静岡の低山で“自遊”時間~「自遊舎の里山・低山トレッキング紀行」《長者ヶ岳トレッキング》編
富士山を真正面に望む名峰「長者ヶ岳」 今回は、静岡県富士宮市にある 長者ヶ岳(1,336m) を歩いてきました。 長者ヶ岳は、富士山の西側に位置する天子山地の山で、山頂から真正面に富士山を望むことができる絶景の山として知られています。 これまで県内の多くの山を歩いてきましたが、山頂から富士山を眺める山としては、私の中で間違いなくベスト3に入る一座です。 2023年5月には、NHKの番組「ウィークエンド中部」の人気コーナー「ゆる山へGO」にガイドとして出演した際にも、この長者ヶ岳を紹介させていただきました。 あの時の賑やかな収録の記憶を懐かしく思い返しながらの入山です。 左端から久保田と桑名ガイド 登山開始 ― 静寂の森を、一歩ずつ噛みしめる 3月5日(木) 冷え込みの残る朝、富士宮市朝霧にある弊社富士宮営業所の近くにある、長者ヶ岳へ向かいました。 朝霧にある富士宮営業所より 登山道は比較的よく整備されており、登り始めは落ち着いた森の中を歩く静かな道が続きます。 急な岩場などは殆どなく、初心者の方でも歩きやすいコースですが、今回は自分自身の心


富士宮ルートと吉田ルートの違い|初心者はどちらが登りやすい?静岡側ガイドが解説
富士山には主に「吉田ルート(山梨県側)」と「富士宮ルート(静岡県側)」という代表的な登山ルートがあります。 「初心者には吉田ルートがおすすめ」と言われることも多い一方で、静岡側の富士宮ルートにも大きな魅力があります。 ここでは、それぞれの特徴を客観的に整理しながら、どんな方に向いているのかを分かりやすく解説します。 吉田ルートの特徴(山梨県側) 山小屋の数が多い 登山者数が最も多い人気ルート 登りと下りが別ルート 「初心者向け」と紹介されることが多い 山小屋が多いため安心感があり、情報も豊富です。その一方で、シーズン中は非常に混雑しやすく、時間帯によっては渋滞が発生することもあります。 富士宮ルートの特徴(静岡県側) 標高約2,400mからスタート(最も高い位置から登山開始) 登山距離が最短 登りと下りが同じルート 吉田ルートに比べれば混雑が少なめ 富士宮ルートは「山頂直下がやや急」「岩場がある」と言われることがあります。 確かに一部岩場はありますが、登山道は整備されており、ガイド同行であれば十分対応可能です。 距離が短いため、体力面では合理的と


富士宮の冬の風物詩「牧野酒蔵 蔵開き」を訪れました
2月1日、富士宮市にある老舗酒蔵 牧野酒蔵 にて、年に一度の恒例行事「蔵開き」が開催されました。 当日は振る舞い酒や日本酒の有料試飲をはじめ、地元業者による出店、ステージでの催しなどが行われ、酒蔵の敷地は多くの来場者で賑わい、まるでお祭りのような活気に包まれていました。 冬の澄んだ空気の中で味わう日本酒は格別で、訪れた方々の笑顔からも、この蔵開きが地域に根付いた大切なイベントであることが伝わってきます。 実は…自遊舎の富士登山ガイドが蔵人として活躍しています 今回の訪問には、もう一つ特別な理由がありました。実は、 弊社の富士登山ガイドのひとりである桑名ガイドが、牧野酒蔵で蔵人として働いています。 山でお客様の安全を支えるガイドとしての顔とはまた違い、酒造りという伝統の世界で真剣に向き合う桑名ガイドの姿は、とても印象的でした。 当日は、同じく弊社富士登山ガイドの 柳沼ガイド とともに訪問し、桑名ガイドを囲んでの3ショット写真、そして牧野酒蔵の 牧野社長 も交えた記念の4ショット写真を撮影させていただきました。 左から桑名ガイド・久保田・柳沼ガイド


稚内を目指した冬の北海道旅 〜「行かない」という選択が教えてくれたこと〜(最終話)
今回の北海道旅行は、結果として「稚内に行けなかった旅」でした。 それは事実ですし、最初に描いていたゴールに辿り着けなかった、という意味では未完の旅だったのかもしれません。 けれど今、振り返って強く思うのは、 この旅は、私自身の仕事——登山ガイドという立場に、深くつながる旅だった ということです。 判断とは、「正解を当てること」ではない 登山でも、旅でも、私たちはつい 「正解」を探してしまいます。 行くべきだったのか 行かなかったのは臆病だったのか もう少し待てば状況は変わったのではないか けれど、実際の現場にあるのは 結果がわかる前の判断 だけです。 天候、交通、時間、体力、経験。 限られた情報の中で、 「今、この時点でどうするか」を決める こと。 今回の旅で繰り返していたのは、まさにその連続でした。 ガイド業で、私が一番大切にしていること 登山ガイドとして、私が一番大切にしているのは、 「行くこと」ではなく、「無事に帰ること」 です。 山頂に立つことは、確かに魅力的です。 けれど、山頂に立たなくても、価値のある登山はいくらでもあります。 むし





















